授受動詞について(3)
2.授受動詞と日本人の特有の心理意識
言語と文化はいつも密接に結ばれている。それに、お互いに影響を與えている。それでは、授受動詞と日本文化はどのような関わりを持っているのかを考えてみよう。
2.1 授受動詞と內外意識
2.1.1內外意識の提出
まず、以下の例文を見てみよう。
(12)a.母は私に時計をくれました。
b.先生は私の妹に時計をくださいました。
確かに、例文(12a、b)では「母」と「先生」は目上の方であるので、「私」に物をくれる時に「くださる」を使うべきである。それでは、例文(12a)で使った「くれました」は間違っているのではないか。
実は例文(12a、b)の二つの文も正しい。「母」は目上の方でありながら、ウチの者なので、ソトの者に話す時、敬語を使う必要はない。下の文も正しい。
(13)a.父は新しい靴を買ってくれた。
b.私は父に辭書を買ってもらいました。
c.うちの課長に見てもらいましょうか。
文の中で、「父」と「うちの課長」は「私」の目上の方であるものの、ソトの者に話す時は、敬語を使うことはない。
以上の分析と例文を見て分かるように、これはいわゆる「內外意識」である。
2.1.2「內外意識」とは
(林璋1998p.18)「簡単に言ってしまえば、「ウチ」とは話し手を中心として、話し手に非常に近い関係の人(子供、兄弟など)、或いは話し手に近い関係とされる人なのである。「ソト」とは、聞き手を中心に、聞き手に非常に近い関係の人、或いは聞き手に近い関係とされた人なのである。」
(姚莉萍2002p.78)「しかし、人と人との親疎、遠近、內外関係はいつも一定しているのではなくて、外國人にとって、とても判斷しにくい。だから、授受動詞を使う時は、間違えやすいのである。」
以下の例文を通して、詳しく説明しよう。
(14)a.花子は太郎に花束をあげた。
b.花子は太郎に花束をくれた。
二つの文の區別は、話し手と太郎との心理的な距離にある。?內外意識?から分析すると、例文(14a)では、太郎は話し手の「ウチの者」とされていない。太郎との関係はちょっと疎い。でも、例文(14b)は例文(14a)とは明らかに違っている。例文(14b)では、太郎は話し手の「ウチの者」とされている。話し手と太郎との心理的な距離が近いのである。
もう一つ複雑な例文を見てみよう。
(15)a.あなたの誕生日に、ご両親はあなたに何をくださいましたか。
b.父はスイス製の腕時計を、母は自分で編んだ黃色のセ-タ-をくれました。
例文(15)には、「話し手」、「あなた」、「あなたの父母」四人が登場した。?私?は話し手として、授受動詞を使った時、ウチとソトを分けなければならない。一般的には、「あなた」にとって、?あなたの父母?はウチの者で、?私?はソトの者である(例えば:例文(15b)である)。でも、例文(15a)では「あなた」をウチの者とし、「あなたの父母」をソトの者としている。「あなた」は私の友達であり、「あなたの父母」より、「あなた」の方が「私」にもっと近いからである。だから、?あなた?は?私?にとって、ウチのものである。
以上の例文を見て分かるように、授受動詞の中で、ウチとソトの分け方は固定的ではなく、人や場面によって、ウチとソトの関係が変わる。だから、真剣に判斷しないと、間違えやすいのである。
2.2 授受動詞と恩恵意識
內外意識の他に、もう一つの意識も授受動詞の運用に重要である。それは恩恵意識である。
2.2.1 恩恵意識の提出
授受動詞?授受補助動詞は、他の動詞?補助動詞とはどういう違いを持っているのか。一體どんな特別な働きがあるのか。このような質問を考えながら、例文(16)、(17)を見てみよう。
(16)a.私は友達の誕生日にプレゼントをあげました。
b.山田さんは妹に帽子をくれまた。
c.友達に歌舞伎の切符をもらいました。
(17)a.グラフさんの自転車のタイヤがパンクしたので、タイヤを直してあげました。
b.せっかく迎えに來てくれたのに、すれ違いになってしまって、ごめんなさい。
例文(16)は、単純的な授受動詞で、例文(17)は授受補助動詞である。下の例文(18)は例文(17)とは形式的に大體同じであるが、文中での働きはちょっと違う。下の分析を通して、この違いが分かるだろう。
(18)a.友達が病気で入院したので、お見舞いに行ってあげなくちゃ。
b.先生は私の意見が面白いと言ってくれた。
以下の文は例文(17a、b)と例文(18a、b)の授受動詞を取り消した後の文である。
(17)a'.グラフさんの自転車のタイヤがパンクしたので、タイヤを直した。
b'.せっかく迎えに來たのに、すれ違いになってしまって、ごめんなさい。
(18)a'.友達が病気で入院したので、お見舞いに行かなくちゃ。
b'.先生は私の意見が面白いと言った。
授受補助動詞を取り消した例文(17a'、 b')は、わけの分からない文になってしまった。例文(17a')では、タイヤを直した人は誰かが明らかにされていない。例文(17b')では、「迎える人」の動作主は話し手の本人と見なせるが、前件は愚癡をこぼすようで、後件は詫びを言うようである。文の意味が通じなくなる。授受補助動詞を取り消した例文(18a'、 b')では、文の意味がなお通じる。ただ「恩恵の與え手」と「恩恵の受け手」がなくなった。
上の文から、授受動詞は動作の授受関係が表せるだけではなく、多くの時に恩恵意識も表せることがわかる。
更に、もう二組の例文を見てください。
(19)a.良子が遅れて來ても分かるように、伝言板に地図を書いておいた。
b.あの車は売ってしまったので、もうここにはない。
c.遅くなって、ごめんなさい。途中で本屋に寄ってきたものだから。
(20)a.せっかくみんなの寫真を撮ってあげようと思ったのに、カメラを忘れてきてしまった。
b.鈴木さんが自転車を修理してくれた。
c.せっかく迎えに來てくれたのに、すれ違いになってごめんなさい。
例文(19)、(20)二組の共通點は補助動詞を使うことである(線をかいたところ)。でも、二組の補助動詞それぞれの働きは同じではない。この點を証明するために、例文(19)、(20)の補助動詞を取り消した後の例文を、比べて見てみよう。
(19)a'.良子が遅れて來ても分かるように、伝言板に地図を書いた。
b'.あの車は売ったので、もうここにはない。
c'.遅くなって、ごめんなさい。途中で本屋に寄ったものだから。
(20)a'.せっかくみんなの寫真を撮ろうと思ったのに、カメラを忘れてきてしまった。
b'.鈴木さんが自転車を修理した。
c'.せっかく迎えに來たのに、すれ違いになってごめんなさい。
例文(19)、(19')では、補助動詞を取り消した前後の意味は同じである。でも例文(20)は、補助動詞を取り消した後、例文(20a'、 b')では動作の受益者がなくなった。例文(20c')での話し手が「迎えられる人」から「迎える人」に変わった。例文(19)、(20)と例文(19')、(20')の対照を通して、授受補助動詞と一般の補助動詞との違いも分かるだろう。
実は、対照しなくても、授受補助動詞の特別な性質も分かる。有名な學者の宮地裕先生はこう述べた:①「~テやる」:主語で表される主體が他人のためにすることを表す。②「~テくれる」:主語で表される主體が話し手や話の中心人物のためにすることを表す。③「~テもらう」:主語で表される主體のために他人がすることを表す。
総じて言えば、授受文の中に欠けない要素は恩恵の受け手(受益者)である。これから、具體的な例を引いて、授受動詞の恩恵性を説明しよう。
2.2.2授受動詞の恩恵性
2.2.2.1単純的な授受動詞の恩恵性
日本語では、単純的な授受動詞は例文(16)のように、具體的な「物」の授受が表せるほかに、以下の例文のように、抽象的な「物」の授受も表せる。
(21)a.今年はスキ-に行かないですか。
b.行けるもんなら、もう行っているわよ。忙しくてどうしても休みがもらえないの。
(22)a.留守中お電話をいただいたそうで……
b.実はご相談したいことがありまして……
(23)a.先生、お聞きしたいことがあるんですが、すこしお時間をいただいてもよろしいでしょうか。
b.いいですよ。
(24)もう一度チャンスをいただけませんか。
例文(16)と例文(21)~(24)で示したように、授受の物は手で觸れる具體的なプレゼント?帽子?切符であろうと、抽象的な電話?時間?チャンスであろうと、受け手にとって、みんな「おめでたい物」である。これは単純的な授受動詞と「與える?受け取る」のような他動詞との根本的な區別である。即ち:単純的な授受動詞は恩恵性を持っている。授受の対象は受け手にとって「おめでたい物」だから、與え手と受け手の間で恩恵の與え手と恩恵の受け手の関係になる。
2.2.2.2授受補助動詞の恩恵性
この問題を説明するために、一つの複雑な例文を見てみよう。
(陳生保.胡國偉.陳華浩1986p.174)「例えば、私がみなさんに寫真屋を紹介しようとする時に、この寫真屋なら皆さんに紹介しても悪くないだろうなと考える。こうした場合、「この寫真屋がうまいんですが、一度彼のところへ行って寫真を撮ってもらってやってくださいませんか。」こう言います。「とってもらって」というと皆さんがこの寫真から恩を受けること、「やって」というと寫真屋へ恩を施すこと、「くださいませんか」というと私が皆さんから恩を受けることを表すわけでありまして、恩の関係はこのように移動するのであります。」
上の段落は金田一先生は「日本語の特質」を論説した時に挙げられた例である。私達外國人にとって、日本人と付き合う時、このような恩恵関係をちゃんと理解してからこそ、うまく交流ができるのである。
もう一つ簡単な例を引いて説明する。
ある學生が先生をコンパに招こうとする時、「先生もコンパに來たいですか」と言ったら、先生は必ず怒って出席しないだろう。たとえ「先生もコンパにいらっしゃいたいですか」と言い換えても、とっても失禮な言い方である。それでは、どう言ったら丁寧な言い方になるだろう。授受動詞を使うと、丁寧な言い方になるということはみんなが知っているだろう。しかし、三種類の授受動詞があって、どれを選んだらいいか。較べながら考えてみよう。
(25)a.先生がコンパに來てくれる。
b.先生にコンパに來てもらう。
c.先生をコンパに呼んであげる。
補助動詞「~てくれる」「~てもらう」は「受ける」という意味を表す。だから、例文(25a、b)では、先生がいらっしゃることは學生にとって恩恵である。でも例文(25c)では「~てあげる」を使ったことによって、學生が先生に恩を施す意味になってしまった。即ち、恩恵の移動から言えば、(25a、b)と(25c)はちょうど反対の意味になる。
菊地先生はこう話した。「実狀は必ずしもそうでなくても、相手から自分に恩恵が與えられるという捉え方をするほうが、相手を立てることになるという発想が日本語にあるのです」。
だから、先生を招くのはたとえ先生に恩を施すことでも、例文(25c)の言い方を使ってはいけない。それでは、例文(25a)と例文(25b)の違いはなんであろう。例文(25a)では、主語は先生で、「來てくれる」も先生の動作で、例文(25b)では、「來る」の動作主が同じような先生であっても、「先生」は補語になり、主語は話し手(第一人稱)になり、「もらう」という動作も話し手がする。このように「先生がいらっしゃる」のに対する「期待な気持ち」が伝えられる。そうすると、例文(25a)では先生が直接に恩を施すことになり、例文(25b)では話し手が先生に頼んで、先生から恩恵を受けるのである。このように、先生の位置はもっと「上」になる。當然、例文(25b)のほうは例文(25a)よりなおいい。
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