世界に例を見(jiàn)ない、洗練された短詩(shī)型である俳句は、右の點(diǎn)的論理が発達(dá)した言語(yǔ)社會(huì)において、はじめて出現(xiàn)した。散文の論理の流れに沿って語(yǔ)を並べたのでは、詩(shī)は成立しない。俳句は、切斷された短い語(yǔ)を、同調(diào)させて並べるのではなくて、むしろ語(yǔ)と語(yǔ)が衝突するように配置する、いわば不同調(diào)の表現(xiàn)という美學(xué)にもとづいている。読者は、それらの不同調(diào)の語(yǔ)群から、何とかひとつの句として統(tǒng)一したイメージを得ようとし、飛躍した一段高い次元での調(diào)和へと導(dǎo)かれる。

　　古池や蛙（かわず）飛びこむ水の音

　　この芭蕉の、よく知られた句において、[古池や]と、それにつづく[蛙飛びこむ?は、自然の靜寂と小動(dòng)物の活動(dòng)で、対照的である。それをあえて結(jié)合しようとすると、読者の心の中には、靜と動(dòng)との葛藤が起こり、やがてそれは止揚(yáng)された世界に収斂される。そのあとに、「水の音?がつづいて、ふたたび異次元間の対立、融合、調(diào)和というプロセスが展開(kāi)される。靜から動(dòng)、さらに音響へと、不連続的に不同調(diào)の表現(xiàn)が並ぶことによって，俳句獨(dú)特のボリフォニィの感じが構(gòu)成される。

　　「解説」

　　以上に紹介したのは、本書(shū)の第一章「日本語(yǔ)の論理?第四章?不同調(diào)の美學(xué)?からの抜萃である。本書(shū)には、ほかに日本語(yǔ)と創(chuàng)造性の関係、外國(guó)語(yǔ)論、映像と言語(yǔ)との関係などについての興味ぶかい考察がおさめられている。“日本語(yǔ)の論理”についての著者の見(jiàn)解は、「日本語(yǔ)の感覚」（一九九五）の中でも、次のように述べられている。

　　「成熟した言語(yǔ)社會(huì)では、線的表現(xiàn)が風(fēng)化し、表現(xiàn)単位が孤立して、點(diǎn)のつながりのような形になる傾向がある。それはどこの國(guó)の言語(yǔ)についても言えるが、日本語(yǔ)はそれ自體が、一民族、一言語(yǔ)そして島國(guó)の言語(yǔ)であるという理由から、その性格が非常につよめられている。日本語(yǔ)は、點(diǎn)と點(diǎn)が飛躍しながら、しかもつながっている。このような言語(yǔ)の性格はボエティックスである。ボエティックスは、ヨーロッパで言えば象徴的方法に近いが、ヨーロッパの象徴よりもさらに高度の象徴が、日本語(yǔ)では自由に行われる。その意味で、日本語(yǔ)がしばしばアイマイさを含むが、しかしアイマイであることは同時(shí)に、解釈の多様性、含みの豊かさ。味ワイの深さ、といった象徴的詩(shī)學(xué)におけるもっとも大切な條件を備えている。

　　著者の専門(mén)分野は英文學(xué)であり、著者の日本語(yǔ)に対する意見(jiàn)は、外國(guó)語(yǔ)とくに英語(yǔ)との対比の立場(chǎng)から出発している。そして著者は、日本語(yǔ)の特殊性を論ずるとき、それは日本語(yǔ)じたい備わった尺度によって考える必要である。と一貫して強(qiáng)調(diào)している。その點(diǎn)において、彼の意見(jiàn)は、さいきん目立って.日本語(yǔ)論?の分野で活躍している鈴木孝夫、渡部昇ーなどの學(xué)者たちと近い。