『祖先崇拝』
祖先崇拝とは、祖先を崇拝すること、または祖先に対する崇拝の情である。その感情を多くの日本人は懐いている。少なくとも、この事実、ないし感情に反逆するのは通常でないとされる。しかし、その崇拝の心意はいかなる內容か、また自分の祖先は誰であるかを確定できるものは、きわめて少ない。この奇妙な現象は、どこから生じたものだろうか?
日本の祖先崇拝は、「家」という社會的契機と、祖霊という宗教的との複合によって成立する。家は、いわゆる家族とは異なり、その中に夫婦の関係を二つ以上含み得るし、また一つも含まなくても成立し、しかも家は世代を超えて存続して行く。家の概念はその內部に、1、直系の血縁親子とその家族(祖父母、父母、子夫婦、孫夫婦など)、2、傍系血縁の親子とその家族(兄弟の夫婦、甥姪の夫婦など)、3、直系で血縁のない者とその家族(夫婦養子、奉公人家族など)、4、傍系の非血縁者とその家族(先代からの譜代奉公人家族など)の全部または一部を、同時に、または異時に含み得る。
血縁の斷絶は、そのまま家の斷絶を意味しない。斷絶が予想される場合には、非血縁の養子によって家が継がれ、また、いちど家が斷絶しても、縁者を立ててその再興が企てられることがある。このように、「家派永続させられなければならない」という要請は、日本人の強力な當為である。
祖先崇拝は、通俗的には、血統相続を地盤として成立するかのように考えられやすい。しかし、それでは、「祖先」が母系をさしおいて父系的にのみ辿られる理由、また或る「祖先」にもさらに親があったはずだが、それは「祖先」として認識されていない――という事実を解釈できない。家は、或る時點における創設によってはじまり、これを統率する家長としての権利?義務を相続することが、家の相続の基本である。それに副次的に血縁尊重の観念が寄り添っているために、外見的に血統相続と見えるのである。
「家は永続させられなければならない」という當為の根拠は、家の始原という事実ないし観念にかかわり、それが子孫の重大な関心と尊重の対象であることに基いている。家の創始者は絶対的な価値を持った者でなければならない。それ故その存続は絶対的なもの戸して主張される。祖先崇拝の成立する根拠は、じつにここにある。およそ家の成員のすべては、祖先を崇拝せねばならず、これを否定するものは所屬の家に対する反逆?背徳となる。それが日本の倫理であり、信従するか否かが個人の自由意志に委ねられる特定の宗教などとは根本的にちがうところである。
皇室や藤原氏などを除けば、數十世代を超えて、家を創立した人物を明確にたどれるばあいはすくない。しかし、現在の家をになう家族にとって、いつの時代にか、その家を創立した祖先のあったことは疑いのないことで、それゆえ常民の祖先は、霊魂としてのそれである。家の創始者の明らかな場合でも、後に述べる日本人固有の霊魂観念と複合して、祖先崇拝は実生活のうえでは宗教的な祖霊信仰?祖先信仰という形をとる。
つぎに、家が拡大してできた共同體である、いわゆる同族団の性格を見よう。地縁による家連合には、組結合と同族結合があるが、前者では家々は平等の資格で橫に結合されるのに対し、後者では本家を中心として、それと分家とが縦の統屬関係に結ばれるのが著しい特徴である。そして後者は、多くのばあい、まず姓と家紋とを共通し、農業の経営。労働組織における共通、財産の一部の共有をはじめとして、その結合は生活の全面を覆う。
同族団は家同士の関係として、世代を超えて存続する。分家は、二?三男以下による、いわゆる血縁分家の場合がふつうであるが、その外に非血縁者(忠実な奉公人など)の分家も珍しくない。また、始めは血縁分家として成立したものでも、世代を重ねるにしたがい血縁はしだいに薄くなるが、同族団構成の原理には変化がない。同族団は、拡大されたひとつの家と看做すことができる。
さて、家と祖先崇拝との不可分な関係は、ひとまわり規模を大きくして、そのまま同族団にもあてはまる。同族祭祀におけるいちじるしい特徴は、つぎのふたつである。第一に、祭られる霊格(神または仏)は多種多様であり、祭の方式は同族団の數だけあるほどそれぞれにちがっている。にもかかわらず、第二に、つぎの點でまったく共通している。この祭の參加は、同族以外の者には厳しく遮斷される一方、同族にとってはそれが権利であるとともに、また義務でもある。
同族神は、稲荷とか八幡とか、さまざまの神や仏の名で呼ばれる。そして、たとえば稲荷が同族神のばあい、たとえ同族の中に稲荷信仰を持たない者があっても、それを理由に祭に不參することは許されない。同様に、いかに稲荷信仰のあついものでも、同族でないものは、その祭に參加することは許されない。こうした現象が起きるのは、同族神の本體は、同族の祖先と考えられるからである。つまり、「祖先」は「尊敬さるべきもの」であれば足りるのであって、その性能は問われない。したがって、それは容易に他の神格、仏格、その他の霊格と習合して、同様祭祀に宗教的外裝を與えるのである。
このように、「祖先」が家(ないし同族団)を創始した具體的な始祖や列祖の人格とかかわりなく崇敬の対象になるのは、日本常民の霊魂観――死者の霊魂は時と共に清くなり、個別性を脫卻して、やがて神聖な「祖霊」としての全一性に昇化していく――と深いかかわりがある。
そのことを強く暗示するものとして、両墓制がある。一般の幕制は、埋葬した上に石碑幕を立てる(単幕制)のであるが、古制とされる両幕制では、埋葬地とは別の場所に石碑を立て、これをもっぱら弔祭の場とする。遺族の「埋め幕」詣(けい)りは、一定の時期で打ち切られるのが普通である。つまり、埋め幕で、なお若干の忌穢(いみけがれ)と個性をもちながら祭られているうちに、死霊はそこから次第に昇化して祖霊と融合し、その結果、やがて詣(けい)り幕で祭られるようになる。
両幕制とともに、死霊から祖霊への転位をさらによく示すのは、死後の年忌法事が三十三回忌(五十回忌のところもある)に至ると、トムライアゲと稱してその後の法事を打ち切る制度である。この時、死霊は清まってカミになるのである。
このように「祖霊」は、実體性のない、非個別性的な存在であるから、それが「祖先」として祭られる時、特定の神や仏によって容易に替される。
死霊から清まった祖霊の鎮まる他界は、何よりも穢れた俗生活界から隔離された聖浄境でなければならない。日本の常民は古來、山をその場所と考えてきた。諸國の霊場と呼ばれる名剎の多くが、ことさら山地に建てられているのは、きわめて注目すべき事実である。また、葬送と関係の深い地名が、全國的に多く山地に存し、詣(けい)り幕や同族神の祭場が、一般に多くは山にちかい高みに設けられているのも、山に祖霊がこもるという観念を示唆している。
いつもは山にあって子孫の生活を見守っている祖霊は、盆と正月に子孫のもとを訪ねて、よろこび語らうものとせられた。今では、盆は濃厚な仏教的著色を蒙り、かつ後々の暦の変化によって、七月十五日を中心とした本來の姿とはいちじるしく違ったものになっている。正月も、普及した文字暦の力によって、一月十五日を中心した本來の姿から、元旦中心の姿に変移した。それに応じて、今では年始め行事の性格をつよめている。しかし、それらの後次的要素に混って、盆と正月も、ともに外から家を訪ねて來る者を迎え祭る行事であるという、対応の一致を見出すことができる。正月には松、盆には花が祖霊の依代(よりしろ)となるが、祖霊はともに山から迎えなくてはならぬものとされている。迎えた祖霊は一定の祭場でもてなされ、火によって送られる。両行事は、また稲作の開始される春と、収穫の終わる秋の満月の日に、互いに対応して存在している。
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